不倫の慰謝料の増額要素となりえる「悪質性」ですが、前回の記事では関係の継続は悪質性が認められると書きましたが、その他、裁判ではどんなケースに悪質性が認められるのでしょうか。
不倫の当事者が虚偽の事実を述べた事案は「悪質性」が認められ、増額要素とされた判例がいくつもあります。
一番よくあるケースが「もう一切連絡も取っていません」と法定で述べたにも関わらず実は連絡も取っているし、関係も継続している、というパターンです。これは前回の記事でも書いた関係の継続と同じことになります。
東京地裁平成29年10月の判例では、不倫当事者同士で同居までしていたのにこれを隠し、「会っていません」と主張したケースもあります。これも当然悪質性が認められています。
東京地裁平成28年7月の判例のケースは、妻が不倫をし、不倫相手との子を妊娠してしまい、その人工妊娠中絶手術を受ける際、夫の名前を使って手術を受けていた、というケースです。
これは、不倫相手の悪質性ではなく、不倫をした有責配偶者の悪質性に着目された判例です。
不倫の当事者が虚偽の事実を述べる理由としては大きく分けて2つのパターンに分かれます。
一つは嘘をついてでも会いたい、関係を続けたい、という不倫関係への依存です。
もう一つは慰謝料の支払いから免れたいという事です。
一つ目は要注意です。
バレたら裁判官の心証は悪くなると分かりそうなものですが、それよりも不倫関係を優先してしまう訳ですから、一旦慰謝料の支払いなどを受けて解決したとしても、その後も水面下で関係が続く可能性が非常に高いです。
不倫をきっかけに離婚するのであればあまり関係ありませんが、夫婦関係の修復をしたい、と考えている場合にはこの一つ目のパターンはかなり注意する必要があります。
不倫相手だけが不倫関係に依存し、有責配偶者はそうでなかったとしても、慰謝料の支払いが終わり、裁判も終わり(または示談解決し)、不倫相手がしつこく関係の継続を迫ってきたら有責配偶者も押しに負けてまたその気になってしまう、という事はよくある事です。
では実際に1度慰謝料の支払いがされて解決した後に同じ相手との不倫が再度発覚した場合、2度目の慰謝料請求が認められるか…
これについては認められるケースと認められにくいケースがあります。
認められるケース
関係の清算をして、慰謝料の支払いがされて解決。実際本当に不倫関係が解消されていたが、時間をあけてまた不倫関係が復活してしまった場合。
この場合には1回目の不倫と2回目の不倫は別個の不法行為として扱われ、2度目の慰謝料請求が認められる可能性が高くなります。
認められにくいケース
関係の清算を約束して、慰謝料を支払って解決したはずが、実は水面下で関係はずっと継続していた場合。これは継続しているので、慰謝料の支払いの前後関係なく1個の不法行為として扱われてしまう可能性が高くなります。
そうすると、この不倫についてはも慰謝料支払い済みだよね、となってしまう訳です。
こうならない為に、最初の慰謝料支払いの約束を取り付ける際、「これで一切解決ですね」とするのではなく、次また不倫が発覚したら慰謝料の請求をします、はい、その時には支払います、という約束をしておくことで2度目の慰謝料も認められやすくなります。
気を付けたいのが裁判ではなく当人同士での示談です。
示談書には一般的には「清算条項」といって、この支払いによって全てこの件は解決済み、今後はこれについてお互い一切何らの請求もしません、という内容を記載する事が多いです。
これを入れてしまうと水面下でずっと継続されていた不倫に対して2度目の請求が難しくなりますので、示談書に次また不倫が発覚したら…という条項を入れる事が重要です。
今後も見据えて色々考えると意外と示談書一つ作成するにも考えておくべきことが沢山あったりします。
不安の無い和解契約書(示談書)を作成しておきたいと思われる時には、やはり専門家の知識を借りる事も選択肢に入れて頂けたらと思います。
当事務所におきましても和解契約書(示談書)の作成やそれに伴うご相談に対応しております。
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