不倫の慰謝料の増額要素となりえる「悪質性」ですが、前回までの記事では関係の継続や虚偽の表示は悪質性が認められると書きましたが、その他、裁判ではどんなケースに悪質性が認められてきたのでしょうか。
不倫相手から離婚をさせようと指示したり行動したりした場合には悪質性があるとして慰謝料の増額要素とされた判例がいくつかあります。
例)女性Aと男性Bが不倫し、妻がCだったとする
200万円以上が認められたケース
AがCに対して直接、「Yと交際しているから離婚してほしい」と求めていた
250万円以上が認められたケース
AがBに対し、Cとの同居を解消するよう繰り返し求めたり、離婚を求めたり(AがBに弁護士を紹介して離婚をすすめる等)しているうちに、BはこのAからの働きかけを受けて離婚への気持ちが強くなり、Cとの同居を解消した事で夫婦関係が破綻するに至った
200万円以上が認められたケース
AがCに対して、離婚を求める、Bとの性的関係をアピールする、Aのことを侮辱する等の行為が非常に悪質とされた
離婚を求める→「離婚を考えて頂けませんでしょうか。200%無理なら諦めようと思います、お返事下さい」といったようなメールを送っていた
性的関係をアピール→「彼とのセックスビデオを送ってしまったことは謝罪します。ごめんなさい。それは隠すべきことですよね。200本以上撮っていますが誰にも見せないようにします」といったメールを送っていた
Aを侮辱→Aから内容証明が届いた事に対し、自身のフェイスブック上で「惨めな奥様。ついに訴えてきた、笑える」といったような記事をあげていた
内容としてはかなり悪質です。
裁判でもこれらの行為は「不貞事案の中でも非常に態様が悪質な部類に入るといわざるを得ない」としています。
ですが、それでも慰謝料200万円ほど…
なぜ…と思ってしまいますが、
この事案では、BがAよりも年長であった事や職位が高かったこと、Bが関係に主導的であった事やAが何度か妊娠中絶を余儀なくされていた事などが「一定程度考慮されるべき」としてこの金額になったようです。
上記例の3つ目を見ても分かるように、認められた慰謝料(弁護士費用含む)については、「悪質性」だけで判断される訳ではなく、その他の色々な状況、要件などを総合的に鑑みて出た判決ですので、「離婚を指示するなどの悪質性」という部分は慰謝料額が決まる為の様々な要素のうちの増額要因の一つとなっている、という事です。


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