配偶者の不倫が原因で離婚をしたり、不倫相手に慰謝料を請求する場合、不貞行為があった事の証拠があった方が有利に事を進められる、という事があります。
証拠が無ければそもそも慰謝料の請求はかなり難しくなりますし、証拠が弱いと相手が不貞行為を否認してきたときに弱い証拠で争っていく事になります。
不貞行為、すなわち性交渉があったという事を証明できる証拠って難しいですよね…
あからさまにそれが分かる会話をしたlineやメールのやり取りが残っていたり、その場で撮影された写真がスマホに残っていたりする事もありますが(実際に私もご依頼者様のそういった証拠を何度か見てはいます)、大体不倫をしている当事者はスマホにはしっかりとロックをかけていますし、そこまではっきりした証拠が無い事のほうが多いかと思います。
そこで証拠を集める一つの選択肢として「探偵に依頼して調査してもらう」という方法があります。
明らかに怪しい日(出張で泊まると言われた日など)に張り込みをしたり、尾行したりして写真を撮ったりするわけです。
この探偵の尾行したり撮影したりする行為について、
プライバシーの侵害にあたると不倫当事者が裁判で主張した判例があります。
↓
平成29年12月20日の東京地裁判例
夫の浮気を疑った妻が探偵社に依頼。
探偵社の調査員が2回にわたり、夫の尾行や張り込み調査を行い、撮影した写真付きの報告書を依頼人である妻に交付。
これについて、夫が「探偵社の調査はプライバシー権の侵害だ!不法行為だから慰謝料を請求する!」といわば逆切れ請求をしてきた訳です。
結果
この調査は「探偵業務」の一環としておこなわれたものであり、同法(探偵業法2条1項)所定の調査や資料収集に必要案行為については許容されている
また調査方法などについても「著しく不相当であるとまでいう事はできない」として違法性が無いと判断。
調査方法が明らかに著しく不相当であれば違法性を帯びるという意味合いなのかもしれませんが、基本的には通常の調査方法であれば問題ないという事でしょう。
ちなみに、探偵の調査費用、慰謝料とは別に相手に請求が出来るか気になりませんか?
数万円で済むことはほとんどない調査費用ですから、相手に請求したいという気持ちも分からなくありません。
これについては、一切認められなかった判例、全額が認められた判例、一部を損害として認められた判例があり、一概にどちらとはいえません。
全額が認められた判例は
AがBの浮気を疑って問いただしたがBが否定、仕方なくAが探偵に依頼したことで不倫相手Cが分かった、という経緯。
探偵に払った費用がCの不法行為と相当因果関係がある損害といえるとして全額認められた判例があります。
請求が棄却された判例は
興信所に依頼した時点で既に不倫関係の存在を合理的に推認される証拠を入手していた
配偶者が当初から不倫相手との性的な関係を認めていたのに興信所に依頼していた
といったような事例についての判例があります。
その他にも色々な判例がありますが、基本的には依頼する前に不貞行為を認めていた場合、別の証拠が既にあった場合、その他探偵社の調査について専門性が認められない、調査では不貞行為の証拠をつかめなかった、といったような場合には請求が棄却されているようです。
また、慰謝料と別の損害としての請求は認められなかったが、慰謝料の増額要因として判断された判例もあります。
具体的な線引きがあるというよりは、事案によって、調査の必要性など色々な事を鑑みて決められる、という事になります。


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